産後うつとは?なったらどうする?

産後うつとは?なったらどうする?

産後に急に気分の落ち込みがある、育児に積極的になれない、など心の変化を感じる産後女性もいます。「母親なのに…」と苦しむ方もいますが、それは産後うつの「症状」ということも大いに考えられます。

誰もがなる可能性がある「産後うつ」。妻、夫ともに、産後の心身の変化や正しい対処法を知っておきましょう。

産婦人科医で周産期メンタルヘルスの専門家の宗田聡(そうだ・さとし)先生に話をうかがいました。


産後うつとは?

産後1ヶ月すぎから1年以内に発症する「うつ」が「産後うつ」で、妊娠中のうつと合わせて「周産期うつ」と呼ばれています。特に産後は育児の忙しさなどで、自分のことは二の次になってしまう母親が、その症状に気付くのが遅くなるということが多いようです。

「産後うつ」は早期に発見して、早めに対応すれば、一般の「うつ」よりも早く治っていくという特徴があります。正しくケアすれば、8割は薬の投与がなくても完治していきます。

出産直後の数日間に気持ちが不安定になったり、涙もろくなったりする「マタニティーブルーズ」は、分娩後のホルモン変化による一時的なものなので、特に治療しなくても自然になおります。ただ、。のちに「産後うつ」になりやすいリスク因子なので、産後、赤ちゃんのことだけでなく、妻の心身の変化にも注意していきましょう。


どんな症状が出るの?

「産後うつ」の症状は、妻の行動や気持ちの変化として現れていきます。妻自身が「こんな気持ちになっているの」と夫に伝えたり、夫が妻の行動を見て、変化に気づいていくことが大切です。

赤ちゃんに関心がわかない、やる気がおきない

誰しも、慣れないお世話で産後は疲れていると思います。ときにはやる気が起きないことだってあります。しかし、「赤ちゃんをかわいいと思えない」という気持ちになってきたら注意が必要。

一方で、そんな気持ちになってしまった自分を責めて、より気分が落ち込んでいくという悪循環になってしまうこともあります。もし、妻がそんな気持ちになったら、素直に夫に打ち明けてください。

食事の準備ができなくなる

料理は、メニューを考え、行う手順を考えている複雑な動きを必要とします。総括的に思考し、行動することが難しくなるのが「うつ」の状態ですので、食事の用意ができなくなるというのは、「うつ」かどうかの症状を計るバロメーターとしてわかりやすいと考えられています。

赤ちゃんのお世話で手一杯で、料理の手を抜くのは大丈夫です(というより、そうなるのも当然)が、料理の手順を考えられなくなっているという状態なら注意が必要です。

寝不足が続いている、限界を感じる

母親はみんな頑張っている、と自分も無理して頑張ってしまう女性ほど、「産後うつ」になりやすい傾向があります。昼も夜も寝る時間がほとんどないのに、ふらふらになりながら、頑張ってしまっていないでしょうか? 妻自身、また、夫も妻を見て、注意しておくことが大事です。

誰かに疲れや不安、イライラを告げても「みんな、同じ思いをしている」、「もう少しの辛抱」などと言われて、さらに頑張ってしまうと弱音すら吐けなくなり、産後うつを知らないうちに進行、悪化させてしまいます。


産後うつかな?と思ったらどうする?

まずは、在住エリアの保健所へ相談に行きましょう。赤ちゃんを産んだ産婦人科では産後の母をケアしてくれる病院はまだ少ないのが現状。また、一方で、心療内科や精神科に行くと薬を処方されておしまい、という場合も。

保健所では、近くに母親の精神状態まで診てくれる産婦人科や小児科があるか、産後うつに対応している病院があるかを教えてくれます。

専門家に診てもらうのと同時に、家庭でもできることを実践していきます。出産に伴う急な変化が産後うつの原因の一つですので、その変化によるストレスを取り除くことが大切。

寝不足が続いているようだったら、少しの時間でも寝られるように育児家事を妻と夫で分担しましょう。分担がどうしてもできない場合は、外部サポートをお願いしたり、自分たちの親や友人を頼るなど、妻だけがすべてのことをこなさなくてはいけない状況を改善します。その外部サポートの手配も、夫が積極的に取り仕切ってあげてください。

また、夫から妻への言葉がけや気遣いも妻を孤立させないために大切なこと。赤ちゃんのかわいさやお世話の大変さに目が行きがちですが、そこで孤軍奮闘している妻を、精神的にも物理的にも一人にしないことが、重要なのです。


宗田 聡先生

医師・医学博士・産業医 /「広尾レディース」院長

米国(ボストン)留学時に出生前診断(遺伝子関連)の研究やWomen’sHealthの研究。帰国後、女性の健康をトータルにケアするクリニック「広尾レディース」院長。日本周産期メンタルヘルス学会評議員、筑波大学・東京都立大学・東京慈恵会医科大学非常勤講師として活躍。
著書に『産後うつ病ガイドブック』『31歳からの子宮の教科書』等。