出生前診断について

出生前診断について

おなかの赤ちゃんが先天的に持っている病気を調べるための検査が、出生前診断と言われています。「確率」がわかるもの、「確定診断」するものがあり、調べられる時期が決まっています。

単純に「調べればいいもの」ではなく、さまざまな問題をはらんでいます。受けるのか、受けないのか、というころから妻と夫で話し合って行くことが必要です。もし、受ける場合は適切なカウンセリングが受けられる病院で行うのがベストです。


受ける?受けない?

高齢出産の場合は、検査を受けますか?と健診で言われることもあります。しかし、「検査ができるなら受ければ?」と単純に考えられるものではありません。

なんらかの病気や染色体異常の可能性が高いという結果だったら、どうするのか? そのとき自分たちは、どう考えるのか? もし、受けてみようかなと思うのならば、事前にそういったことに思いを巡らせてから、受ける準備を進めることをおすすめします。

そして、検査は受けられる時期に限りがあります。時間のない中で重要な決断を迫られるケースもあります。

赤ちゃんがどんな状況でも産みたいと思うなら、出生前診断は必要ないかもしれません。

反対に、「どんな状況でも産みたいから、心の準備やそのほか受け入れ準備をしたい」と思って検査を受けるという人もいます。

また、すでにいる上の子のことを考えて、検査を受けたいという人もいるかもしれません。

とはいえ、どうするのかを事前に決めて診断を受けても、結果を聞いて心が揺らいだり、ストレスを感じることも当然あります。そのとき、夫婦での話し合いはもちろん、適切にカウンセリングを行える専門家がいることが大切なのです。

臨床遺伝専門医制度委員会

  • 検査の内容、結果について説明を受けられる「臨床遺伝学専門医」、「臨床遺伝カウンセラー」のいる病院、医師がわかるサイト
    http://www.jbmg.jp/


倫理的問題、身体的負担も知っておこう

出生前診断が陽性だとわかって行う「産まない選択」は、病気や障がいをもって産まれている人たちやその家族にとっては、どんな意味になるでしょうか。出生前診断で「命の選択」が行われることによって、病気や障がいをもつ人たちやその家族が生きづらい社会になってしまうのでは?という懸念があります。

また、重い病気のある人や障がい者と、健常者の暮らしに距離があることが、「わが子が病気や障がいをもったら、どうすればいいのかわからない」という不安につながっているのではないでしょうか。検査を受けるかどうか、そして、受けてからの判断をする前に、病気や障がいについてや、その人たちがどういった暮らしをしているのかを知ることも大切なことなのではないでしょうか。

公益財団法人 日本ダウン症協会

また、産まない選択をする場合、母体の負担が大きくなります。妊娠12週以降の人工妊娠中絶では、陣痛を誘発する薬を使って、出産のような形で赤ちゃんが外に出されます。もちろん、出生前診断の結果を受けて人工妊娠中絶を行った妊婦の精神的負担についてもケアが必要です。心身の負担も考えて、検査を受けるかどうかを検討することになります。


どんな検査があるの?

新型出生前診断(妊娠10~18週)

血液中のDNA断片を分析し、胎児に特定の染色体異常がないかどうかを検査します。母体血清マーカーよりも高い精度であるといわれていますが、確定診断ではありません。2016年の時点では日本では臨床研究として行われているため、一般的な検査ではありません。

初期出生前マーカー検査(妊娠12〜13週)

リスク因子として、超音波で検査し測定したマーカー(胎児のくびの浮腫みや鼻骨の確認の有無など)や母親の血液から調べるマーカーを利用して、ダウン症などが起きるリスク計算(確率)をします。「1/143」などの確率で結果が出ます。結果を受けて、確定診断をするためには、絨毛検査や羊水検査を行う必要があります。

母体血清マーカー検査(妊娠15週〜17週)

妊婦さんの血液を採取し、血液中の成分の濃度を調べる検査で、測定する成分の数により、トリプルテスト、クアトロテストなどとも言われます。成分の測定と年齢などいくつかの因子を含めて、リスク計算(確率)をする検査です。「1/143」などの確率で結果が出ます。結果を受けて、確定診断をするためには、羊水検査を行う必要があります。

羊水検査(妊娠15週以降)

おなかに針をさして、羊水をとり赤ちゃんの染色体を調べます。妊娠15週から検査可能で、ダウン症などの染色体異常が分かります。一般的には日帰り検査で、慣れた専門家が行なっていれば、通常の採血とあまり変わりませんが、施設による差はあります。結果が出るまでは2~3週間。流産や破水のリスクは1/300~1/1600確率であるといわれています。

中期超音波検査(妊娠25週前後)

赤ちゃんの顔面の奇形や心臓の奇形、水頭症や内臓の異常などの超音波検査で分かるような大きな身体の異常をチェックする検査。


(監修: 医師・医学博士・産業医 /「広尾レディース」院長 宗田 聡 先生)


<注釈>

※NPO法人マドレボニータは、出生前検査・診断の技術そのものに対して、特に見解を示すことはありません。 また、出生前検査・診断を一人ひとりがどう理解し、選択するかについて、賛成や反対の意見を表明することはありません。