産院を決めることは、産褥期の生活場所を決めること

出産は「ゴール」ではなく、「スタート」

妊娠したら、「無事出産する」のが当面の目標と考えている妊婦さんとパートナーは多いのではないでしょうか。もちろん、今までの人生の中でも、とても大きなミッション。「無痛分娩がいい」「水中出産に憧れて」と「出産」のスタイルをいろいろと考えたくなってしまうかもしれません。しかし、出産はマラソンのゴール地点とは違います(確かにフルマラソン並みの体力は使いますが…)。

分娩を終えて、赤ちゃんを迎える。そこからが本当の「スタート」。子どもを育てる、家族を営む「スタート」地点に立たされます。

産院は「希望通りの出産を叶える施設」ではなく、無事に出産し、赤ちゃんとの生活を始める起点となるわけです。

希望通りの出産を叶えることで前向きに子育てスタートができるということもあると思います。しかし、それ以上に妻が産後をどう過ごすかが、妻自身だけでなく、子供にとっても、ひいては夫にとっても、大切な問題です。


産後の体の「現実」を考えて、どこで産むのか?

想像してみましょう。フルマラソン(あるいは、今までで限界超えだった運動などを思い浮かべてください。満身創痍の状態です)を走りきった後に、すぐ毎晩数時間ごとに起きて、赤ちゃんのお世話をすると考えたら…?

もちろん、かわいい赤ちゃんが隣に寝ているという、このうえない幸せを感じられるはずです。でも、その隣で横たわる母親の体はボロボロになっています。

産褥期という、胎盤が剥がれ落ち、内臓内で大怪我を負っている状態のときに、どこでなら安心して生まれたての赤ちゃんと一緒にいられるか、母体をしっかり休めていられるのかを考えましょう。

実家に戻るのか、現在住む家にいるのか、どこの場所で産褥期を過ごすのかを考えてから、産院の場所を選びましょう。産院に入院しているのは、5日〜1週間という人がほとんど。退院後すぐに長距離移動は体に負担がかかりすぎますので、産院の近くで産褥期をすごすことになります。

里帰り出産なのか、マイホーム出産なのか、先輩母、父の体験談も参考にしつつ、夫婦で話し合ってみましょう。

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産褥期については「産褥期って何?産褥期の母の体」(お役立ち「産後の心と体」カテゴリ内)をご参照ください。

里帰り出産とマイホーム出産については「マイタウン出産って何?」「里帰り出産、成功談&失敗談」(お役立ち「産後の生活の準備」カテゴリ内)も合わせてご参照ください。


(監修: 杏林大学 保健学部 准教授 佐々木 裕子 先生)